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21.「春の朧」

コサ館 八重桜コサージュ

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菫が続くはずだったんですが、せっかく世の中そういう季節なので、今回は八重桜のコサージュを。これ、実はカネコ系のコサではないんです。コサバカ仲間コサ館のマダムコサージュ様のオリジナル。(なのでお問い合わせとかはご遠慮ください、ごめんなさいです;)

この02年の春本当に久しぶりに金子氏の桜柄がWWから発表されましたけど、桜コサージュは出なかったんですね。ずっとずっと前、PHで桜柄が出たのは80年代後半で、もう10年以上も経ちますけど、そのときは桜のコサージュが出てました。…でもね、わたしそのコサージュあんまり好きじゃなかったので、買いませんでした。桜は大好きな花だけにこだわりが深くて、花弁の薄さとか色の儚さとかのディフォルメ具合がわたしの感性でみている桜とは違ってて、そういうところに満足できなかったのです。

着物用に出てる和小物の桜のかんざしとかもワタクシ的には全然ダメで、あんなの桜じゃないやい!と主観的には思う。だから桜だけは、桜の季節に生きた枝をほんの短い間だけ髪に飾るのを至高の贅沢と考えていました。

そんなわたしですが、この八重桜はきれいだと思いました。薄い薄い素材を幾重にも重ねた花弁、白と見紛うほどの儚い色を刷いた花。本物の八重桜はもっと色が濃いんですけど、この儚さこそわたしの中のさくら、春の空気にとける朧の色なのです。八重桜とそめいよしのの中間みたいな、どこにもないまぼろしのさくら。どちらかに完全によせちゃっていたらここまできれいじゃなかったと思いますし、一重だったらすごくさびしい花になっていた気がします。一重のさくら、そめいよしのより、八重桜はコサージュにディフォルメするのに向いているのかもしれませんね。

いくら気に入ってても、さすがに桜とじゃぱにーず(笑)、感性としてオールシーズンつけられるってわけにはいかないのですが、冬から春にかけては散る花を惜しむ気持ちで活躍させます。今年のWWの桜柄も手元にあることですし、あわせてこれをつけてでかけたいと思います。

コサージュ好きが昂じてコサージュを作り始めてしまったおともだちのオリジナル。小さめなところもまたお気に入りで、ひとつでつけるのはもちろんのこと、似た素材のオーガンジーの薔薇なんかと重ね付けしたりもして使っています。茎の色がとてもきれいに桜らしい。
規格品ではないのでまさしく一点もの。HPで以前カウンタプレゼントをやっていらしたときに、偶然前後賞を踏んだときのプレゼントがこれでした。いただいちゃったわたしはとても幸せ者です。

19.「菫色の蝶々」

MKI98冬 菫ブートニア

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薔薇が続いたので今度は菫にしてみました。菫はそんなにたくさんは持っていないんですけど、そのいくつかでもけっこう違いがわかって面白いかもと思って。これはメンズのブートニア、男性用のコサージュです。男性のジャケットの襟につけるものなので、小ぶりで手のひらサイズ。厚みがないのでおさまりもよくて、ちょっとつけたいときに便利です。

3色菫っていうと、本物は花弁も茎もしなっとやわらかくて、ちょうど小さ目の蝶がとまっているみたいな姿です。青や紫のこの花を、そのふんわりした感じそのままでシングルブーケにしたものが大好きなんですけど、これはベルベットの張り合わせになっててかなりカチっとかためにできています。花型はすごく本物と似てるのに風情が全然違って見えるのが面白い。そのせいか厚手のウールものとかに似合う気がして、マフラーに添えたりとか、ピーコートの襟につけたりとか、わたしは主に冬によく活躍させています。

コサージュってどんなに上手に本物に似せて作っても、やっぱり生花にはかなわないんですね。だから、全てを似せてそっくりにつくろうとするのではなく、コサージュならではの魅力を上手にブレンドして作られたものが好きです。まあ、そのディフォルメ具合にもまたコサばかの面々にはそれぞれ好みというものがありまして…そんなことについて語り始めると永久に自分のフェティッシュを語ってしまうので、このあたりで本日は(笑)。

菫と言ってもこれはどう見ても三色菫、パンジーの花型ですよね。これが以前どこぞの章で言ってたものです。茶系とかのそれらしい色も何種類も出てました。これはほんとにきれいな菫石、アイオライトみたいな色です。中央だけ濃い青にぼかし染めしてあって、その色もまた絶妙。ブラウザだと色が再現できないのが残念です。

18.「お姫さまの花飾り」

WW98冬 薔薇コサージュブレスレット

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薔薇が続いたので、比較してみていただくのもいいかと思い、また薔薇にしてみました。結局こうやってみると薔薇のコサージュをすごくたくさん持っていることに気がつきます。しかも似たようなのばっか(笑)。わたし、趣味の範囲が狭いんですよね。だからいつも同じようなの買ってる。色も白か青かパープルで、あってもピンクまで。これなんかまさしく白でオールドでいっぱい持ってるじゃん!ってものの典型(笑)。…なんですけど、コサージュブレスレットっていうのが珍しくて。最近でこそよく出ますけど、以前はブレスは珍しかったんです。
わたしには甘すぎるかなと思ったんですけど、買ってみたら手だけでなく、バッグの持ち手につけたり髪に飾ったり、ジャケットチェーンにしたりといろいろに使えてとても便利でした。これで1万なんて㈱KANEKO ISAO企業努力!!赤茶も買っておくんだったと後悔してます(笑)。

金のチェーンにサテンリボン、涙パールということで、パーツ的にはフォーマル向けであんまり綿の花柄系の服には合わなそうなんですけど、花のほうが目立つせいか、つけてみるとわりとこだわらずに使えています。そしてブロード・ローンにかかわらず、無地とは相性抜群です。

実物見たとき、すごく童話的なデザインだと思いました。童話のお姫様ってこういうイメージがあるのです。前に紹介した白いリースは『目覚めない眠り姫』のイメージでしたが、これは『目覚めるべき眠り姫』のイメージがあります。どこが違うのかといわれると困っちゃうのですが、同じやわらかな白薔薇でも花だけでまとめたものと違って、パールやチェーンという”飾って見せる”目的を持って用意される社会的な素材をあわせているせいか、こちらはなんとなく前向きというか、外向きな感じがするのです。お姫様を飾る婚礼の飾りはこんなふうに可憐でゴージャスにまとめられるのが相応しいのではないかなと、勝手に思うわけです。

薔薇の花が3輪ついたブレスレット。薔薇の間は金のチェーンにサテンリボンを通したもので繋がれてて、先には涙型のパールが下がるようになってます。ケンティフォリア(千の花弁を意味する言葉で、原種薔薇・オールドローズの代表種)風の花弁も盃状咲きの花型も素敵。わかりにくい置き方で写真を撮ってすみません;; でもこのワイヤの蔓がくるくるしてるのがツボなんです(笑)。

16.「シャァベット・ローズ」

WW01秋 一輪薔薇アームコサージュ

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蒼薔薇、といえば幻想文学や吸血鬼ものの読者のみならず、知る人ぞ知る『幻の薔薇』の代名詞。交配に交配を繰り返しどんなに研究を重ねても、本当に蒼と呼べる薔薇どころか、青とさえ呼べる薔薇もできない。ブルゥムーンもシャルルドゴールも、青といいながらその色は所詮紫に留まる。

薔薇はその身のうちに蒼という色のための色素を持っていながら、その色素を発現できない要素をあわせ抱いている。できないからこそ求め、叶わぬからこそ焦がれる。自然の法則への挑戦は神への反逆。不可能性と二律背反、浪漫と高貴、魔性美への希求の結晶。
…なあんつって、一時期薔薇に凝ったことがあるので、そのときのいいかげんな知識でうたってみました青薔薇(笑)。まあ、青い薔薇の紹介としては概ね間違ってないと思います。

青薔薇と言えばこういう高貴で人工的なイメージがあると思うんですけど、この青い薔薇は全然そんな大仰な感じがしないところが好きです。淡い色味ところんとしたかたちのせいか、青薔薇というよりは、雪の結晶とか氷細工みたい。サクサクしたシャアベットのよう、触れたらやわらかく消えてゆくような。優しい冷たさと儚い可憐さのあるコサージュだと思います。(バリバリに『蒼薔薇』っていうような高貴でコールドな感じの青い薔薇のコサージュも持っておりますが)

ラフィアを結んで使うっていうのはわかるんだけど、腕に自分でどうやって結べというのでしょう?;; 片手で蝶結びなんでてきないです、カネコセンセイ! …ので、バッグの持ち手や髪に飾られるか、ラフィアをそのまま花の根元に蝶結びして、コサージュピンを絡めて普通にコサージュとして胸におさまってることが多いです(笑)。ころんとまるくて厚みがあるため、けっこうすわりにくいデザインだと思いますが、ラフィアのわらわらがうまくクッションになってくれてます。

ポプリンというオーガンジーよりちょっと厚手の素材の薔薇のコサージュです。コサージュと言っても通常の胸につけるものではなく、ラフィア(後ろの藁みたいなのです)部分を巻きつけて結んで使うもの。二の腕につけるのがオフィシャルコーディらしいので、アームコサージュという商品名になってました。

15.「白皙の薔薇」

KI00冬 薔薇リースコサージュ

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わたしのリースコサージュばかぶりは既に名高く、これが出ると決まったとき、友人達はこぞって「何個買うの?」とききました(爆)。
ところがこれは1個しか買っていません。これ、大きいリースと小さいリースが二重になってついてひとつのコサージュなんですね。だから、重ね付けするスキマがないんです。それに造りがカチっとしてる分だけやっぱり重め。これはジャケットとか、少し堅めのスタイルに似合うタイプのコサージュだと思うので、重ねてぼかしてしまうより、ひとつをキリっとつけたいなと。

これは色名は「キナリ」なんですが、この他のお色もみんな繊細で渋いやわらかさがあって素敵でした。特に「ダークピンク」は淡いピンクとサーモンピンクの二色遣いで、思わず「こっちもください」と口から出かかる(笑)美しさでした。

これに限らないんですけど、やっぱりKANEKO ISAOのコサージュはWONDERFUL WORLDのに較べるとノーブルっていうか、端正な感じにできていると思います。前にあげたPHの蔓小薔薇リースが『可愛い子』なら、このKIの薔薇リースは『美しい女性』という感じ。
INGEBORGのコサージュも繊細だけど端正で、上品なスーツやワンピース向けだし。たかがコサですが、よ~~く見るとブランド毎の特徴ってはっきりありますよね。

PHの蔓小薔薇よりクラシカルでフォーマルっぽいイメージにできてます。薔薇も花縁はオールドの雰囲気ありますが、高芯咲きなところは現代の趣に近づけてあって、なかなか微妙。葉はシールといってベルベットみたいな毛足のある素材です。全体もカチっと硬めにできてて、花とか全体の色合いとか、とても端正です。

14.「弔いの鐘の音」

WW96冬 鈴蘭コサージュ

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鈴蘭に毒があると知っていましたか?
小さくて可憐で、うつむくようにひそやかに咲くその姿からは想像もつかない。心臓に作用して、場合によっては死に至ることもあるそうです。無垢で純粋な姿と、涼しく透明な香り。その中に秘められた幽かな毒。そのとりあわせはまさしく『少女』そのものであると思います。
とはいえ、香りをかいで死ぬようなシロモノではないのでご安心を。根っこの部分に毒があるんだそうです。けれどむしろ鈴蘭の香りで死ねたなら、それはそれは美しいと思うんですけど。

鈴蘭の香りは大好きです。アルコール系の香水が苦手なわたしが唯一持ってるパルファン・ド・トワレが鈴蘭。英国ウィンザー社の、どこでも手に入るお安い香水ですが何故かこれだけは気に入っています(といっても滅多に使わないので半分くらいは揮発してしまっているのではないかという気もしますが)。

いっぱいに敷き詰めた鈴蘭を抱いて、白い服で死ねたらどんなにしあわせでしょう。
聖母マリアの花と言われる花のうちのひとつでもある鈴蘭。小さなちいさな鐘をいくつも下げたような姿は天上へのミクロコスモス、まるで天への階音を具現化したよう。さやと吹く風に、ふと幽かな弔いの鐘の音を聴いたように思って、わたしはときどき5月の中に立ちすくむのです。

最近出てる鈴蘭より、微妙に小さめの花粒に、黒のベルベットリボンがクラシカル。このリボンのせいで弔いの花のイメージがより強くなっているのだろうなあ。ベルベットリボンがついちゃうとどうしてもコーディは限られてしまうんですが、花が気に入ったのはこれだけ。鈴蘭は花首のところが紙なのでどうしてもすぐ折れちゃう。すごーく大切に使っているコサージュです。

14suzuran_ww96_02花粒の拡大図。誰もそこまで興味ないだろうけど、載せてしまうのでした(笑)。
鈴蘭は好みのコサージュに出会うのがなかなかたいへんな花です。本物の鈴蘭てほんとに小さいので、布で再現するとどうしても本物より繊細さに欠けちゃうんです。小さい花でブーケにするには花の数もたくさんいるし、小さくてかぶりが深ければコテあてもより難しい。当然、価格も上がるわけです。鈴蘭コサが高いのは技術料なんですよん。

13.「薔薇の色の薔薇」

PH91夏 薔薇ブーケコサージュ

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薔薇色、と言って思い浮かべる色は千差万別だと思うのですが、わたしの中での薔薇色はまさしくこのコサージュの色。褪せたような淡い色調。ピンクでも茶でもベージュでもない、これは薔薇の色。

このコサージュはわたしが好きで好きで仕方なかった、格子薔薇柄というプリントのコーディネイト商品として出たものでした。小さな薔薇の花と蕾をバイヤスの格子位置に配し、その間を蔓でつないだテキスタイルは可憐で美しく、当時の人気商品として伝説になっている柄のひとつです。

このプリントは何色もの地色でブロードと綿ローンとにプリントされたんですけど、コサージュはこれ1色だけでした。そしてこのコサージュはたぶん、特に綿ローンのピンクのために作られたコサージュなんだと思います。
淡く透ける水晶質の綿ローン、そのピンクの地色はまさしく薔薇色でした。コレクションでその服を見た時の感動たるや、いまだに忘れられません。古い時代の幻影を見せるかのように淡くひるがえるスカート、ライトを浴びて鈍く透け輝く薔薇のプリント。見たこともない時代の遠い遠い記憶を一瞬の映画のように視せられた気がしたのです。

でも自分が着たいと思ったのはピンクではなくブルーグレー。地色ではなく薔薇のプリントの色が、この薔薇の色そのままでした。
当時はわたしはまだ学生。おまけにからだを壊して入院していたこともあって、結局その服は手に入りませんでした。
ずっとずっと繰り返し夢に見続けて、夢に見るあまり似たプリントをいくつも買って。10年経った今になって、ある方からその服を譲っていただいたときは逆に不思議な感じで、手に入ってはいけなかったような気さえしました。

今手元にあるけれど、憧れた気持ちはあのショウのときの一瞬の映画のように気持ちに焼きつけられて、この薔薇を見るとせつなくなります。

これも本当に古いコサージュ。今から10年以上も前のもの。葉っぱや茎の素材の使い方に昔っぽさがあります。蕾の造りとか今のと全然違って、芯になる綿を布で包んであったり。今の花びらを重ねたタイプの方がより洗練されてリアルです。
これもオールドローズですが、「セピア色の花2」で紹介したオールドとはタイプが違うのがわかっていただけますか? あれは一重咲きで、こちらは花弁の多いもの。カップ咲きと言われる、外側の花弁が内側の花弁を丸く抱え込んだタイプの咲き方を模しています。他には中央の花弁がくしゃくしゃっとして、きれいに巻いてないところがオールドの特徴のひとつ。中世の絵に出てくる薔薇ってみんなこんな感じでしょう?