13.「薔薇の色の薔薇」

PH91夏 薔薇ブーケコサージュ

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薔薇色、と言って思い浮かべる色は千差万別だと思うのですが、わたしの中での薔薇色はまさしくこのコサージュの色。褪せたような淡い色調。ピンクでも茶でもベージュでもない、これは薔薇の色。

このコサージュはわたしが好きで好きで仕方なかった、格子薔薇柄というプリントのコーディネイト商品として出たものでした。小さな薔薇の花と蕾をバイヤスの格子位置に配し、その間を蔓でつないだテキスタイルは可憐で美しく、当時の人気商品として伝説になっている柄のひとつです。

このプリントは何色もの地色でブロードと綿ローンとにプリントされたんですけど、コサージュはこれ1色だけでした。そしてこのコサージュはたぶん、特に綿ローンのピンクのために作られたコサージュなんだと思います。
淡く透ける水晶質の綿ローン、そのピンクの地色はまさしく薔薇色でした。コレクションでその服を見た時の感動たるや、いまだに忘れられません。古い時代の幻影を見せるかのように淡くひるがえるスカート、ライトを浴びて鈍く透け輝く薔薇のプリント。見たこともない時代の遠い遠い記憶を一瞬の映画のように視せられた気がしたのです。

でも自分が着たいと思ったのはピンクではなくブルーグレー。地色ではなく薔薇のプリントの色が、この薔薇の色そのままでした。
当時はわたしはまだ学生。おまけにからだを壊して入院していたこともあって、結局その服は手に入りませんでした。
ずっとずっと繰り返し夢に見続けて、夢に見るあまり似たプリントをいくつも買って。10年経った今になって、ある方からその服を譲っていただいたときは逆に不思議な感じで、手に入ってはいけなかったような気さえしました。

今手元にあるけれど、憧れた気持ちはあのショウのときの一瞬の映画のように気持ちに焼きつけられて、この薔薇を見るとせつなくなります。

これも本当に古いコサージュ。今から10年以上も前のもの。葉っぱや茎の素材の使い方に昔っぽさがあります。蕾の造りとか今のと全然違って、芯になる綿を布で包んであったり。今の花びらを重ねたタイプの方がより洗練されてリアルです。
これもオールドローズですが、「セピア色の花2」で紹介したオールドとはタイプが違うのがわかっていただけますか? あれは一重咲きで、こちらは花弁の多いもの。カップ咲きと言われる、外側の花弁が内側の花弁を丸く抱え込んだタイプの咲き方を模しています。他には中央の花弁がくしゃくしゃっとして、きれいに巻いてないところがオールドの特徴のひとつ。中世の絵に出てくる薔薇ってみんなこんな感じでしょう?