14.「弔いの鐘の音」

WW96冬 鈴蘭コサージュ

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鈴蘭に毒があると知っていましたか?
小さくて可憐で、うつむくようにひそやかに咲くその姿からは想像もつかない。心臓に作用して、場合によっては死に至ることもあるそうです。無垢で純粋な姿と、涼しく透明な香り。その中に秘められた幽かな毒。そのとりあわせはまさしく『少女』そのものであると思います。
とはいえ、香りをかいで死ぬようなシロモノではないのでご安心を。根っこの部分に毒があるんだそうです。けれどむしろ鈴蘭の香りで死ねたなら、それはそれは美しいと思うんですけど。

鈴蘭の香りは大好きです。アルコール系の香水が苦手なわたしが唯一持ってるパルファン・ド・トワレが鈴蘭。英国ウィンザー社の、どこでも手に入るお安い香水ですが何故かこれだけは気に入っています(といっても滅多に使わないので半分くらいは揮発してしまっているのではないかという気もしますが)。

いっぱいに敷き詰めた鈴蘭を抱いて、白い服で死ねたらどんなにしあわせでしょう。
聖母マリアの花と言われる花のうちのひとつでもある鈴蘭。小さなちいさな鐘をいくつも下げたような姿は天上へのミクロコスモス、まるで天への階音を具現化したよう。さやと吹く風に、ふと幽かな弔いの鐘の音を聴いたように思って、わたしはときどき5月の中に立ちすくむのです。

最近出てる鈴蘭より、微妙に小さめの花粒に、黒のベルベットリボンがクラシカル。このリボンのせいで弔いの花のイメージがより強くなっているのだろうなあ。ベルベットリボンがついちゃうとどうしてもコーディは限られてしまうんですが、花が気に入ったのはこれだけ。鈴蘭は花首のところが紙なのでどうしてもすぐ折れちゃう。すごーく大切に使っているコサージュです。

14suzuran_ww96_02花粒の拡大図。誰もそこまで興味ないだろうけど、載せてしまうのでした(笑)。
鈴蘭は好みのコサージュに出会うのがなかなかたいへんな花です。本物の鈴蘭てほんとに小さいので、布で再現するとどうしても本物より繊細さに欠けちゃうんです。小さい花でブーケにするには花の数もたくさんいるし、小さくてかぶりが深ければコテあてもより難しい。当然、価格も上がるわけです。鈴蘭コサが高いのは技術料なんですよん。