「とおりゃんせ」

hanakusudama

通りゃんせ、通りゃんせ、ここはどこの細道じゃ、天神さまの細道じゃ。

子供の頃から大好きだった唄、とおりゃんせ。わたしが子供の頃をすごした町には、秋祭りなんかでは大きな縁日を張る、ちょっと有名な神社がありました。お祭りの日には人と提灯の灯りででごった返すけれど、普段はほとんど人なんかいない。そしてその神社はちょうどわたしの家からは子供の足で行ける限界いっぱいの距離くらいで、地域の子供の遊び場としてはいちばん端にあたるところでした。

それは子供のわたしにとっての世界のはて。その外はもう自分にとっては異国というか、もっと言ってしまえばその先にはもう何もないような感覚の場所。一種の結界のようなところ。とおりゃんせとくちずさんだら本当に帰れなくなるような、だから怖くておしだまって夕暮れになると逃げるように帰る、あの暗い土の景色がわたしの原風景のひとつ。

思えば世界のはてが神社だなんてできすぎているけれど、きっとあの昼でも薄暗いような場所がわたしの世界のはてだったことが、わたしのこころに与えた影響は大きいのだと思います。

神社の向こうどころかもっともっと遠くにだって簡単に行けて、今は世界の外側に暮らしているわたしですが、先日その神社に行ってみたら、やっぱりその空間と空気は「世界のはて」のままでした。戯れにとおりゃんせとくちずさんでみようかと思ったけれど、やっぱり怖くてやめてしまった。

世界のはての結界の魔力は、そこをはなれた今もやはりわたしを縛っている。

大人用の着物だったらわたしが今着たかった…と真剣に悔しく思ったこの一枚。紅色の綸子に花くすだまの染め。こうやってみると子供用とは思えない趣味だけど、丈は100センチないのです、悲しい。もう子供用の帯はないので(実はあるけどこの着物には合わない)、大人用の絞りの帯でごまかし(笑)。刷り込みなのか、今も着ているわたしの着物はこういう感じのものが多い気がします(笑)。いつまでしまっておいてもしかたないし、着用するにはちょっと汚れもあるので、人形作家のおともだちに使ってもらおうかな…と思ってます。人形によってはこのまま着せられると思う。

noah_hanakusudama

追記:
そしてほんとに着せていただいた。
『擬似少女楽園廃墟』でもお世話になったノアさんのお人形。たいへん美人な子で感無量。
ほんとに全くお直しをしないまま着せたのに、誂えたように丈も裄もぴったりだったそうで、さらに吃驚。
顔がとても好きな人形だったので思わず欲しくなったけど、90センチもある人形を置く場所はないので未練を残しつつ諦めました。

遠方の展示でどなたかに買われていったらしい。大事にしてもらっていることを願いつつ。

DollhouseNoah作品
2003.3.エコールドシモン展
(新宿紀伊国屋ギャラリー)

錦紗四つ身
(自宅行李より発掘)