「馨に溺れる」

蝋梅、沈丁花、茉莉花、薔薇、金木犀。梔子は一番最初に馨を憶えた花、生家に梔子の木があったから。
わたしは生まれつき嗅覚が鋭いらしく、むかしから空気に混ざって流れてくる香りで花の名を言い当てる子供だった。おしろいばなが咲いているのだって見なくてもわかる。
花の名と香りが一致するのは母が花が好きで、路を歩いてはわたしにあれは何の花、これは何の花、と花の名を教えてくれたせいでもあるだろう。
世の人が苦手な香味野菜も大好きなら、紅茶や中国茶の微妙な香りをききわけるのもまた楽しい。とにかく馨モノに敏感な体質であると思う。
なのだけれど、何故かアルコール系香料、所謂香水はからだにあわないらしく、近くによるだけで変調を来す。
そんなわたしだけれど、香水瓶は好きである。ラリックの香水瓶に受けた衝撃をはじめ、ひとつひとつが個性的で宝飾品のように美しい。金子功氏がその著書でレースを布地の宝石と言ったのを見たことがあるが、香水を液体の宝石と言ったのは誰だったか。フランス人だった気がするけれど忘れてしまった。
うちにある香水瓶にはなかみは勿論入っていない。
空っぽの香水瓶を眺めては、架空の夜光花の馨などに酔ってみるのも、馨への溺れ方としては最上の部類だと思う。
香水瓶は自分で買ったことはない気がする。たいがいが女の子からのいただきもので、はずれなく可愛いものをいただく。画像の香水瓶も例に洩れずいただきもので、フランス製ときいた記憶。香水ってなぜかお仏蘭西なイメージがある。
ふと気がついたけれど、この香水瓶、旧朝香邸(目黒の庭園美術館)の香水塔にシルエットが似ている気がする。香水塔というのは、要は巨大なアロマランプなのだが、あれは概念といい存在といい名前といい、わたしの永遠の憧れの装置だったりする。
香水瓶
硝子とピューター(現代)

17parfume

蝋梅、沈丁花、茉莉花、薔薇、金木犀。梔子は一番最初に馨を憶えた花、生家に梔子の木があったから。

わたしは生まれつき嗅覚が鋭いらしく、むかしから空気に混ざって流れてくる香りで花の名を言い当てる子供だった。おしろいばなが咲いているのだって見なくてもわかる。

花の名と香りが一致するのは母が花が好きで、路を歩いてはわたしにあれは何の花、これは何の花、と花の名を教えてくれたせいでもあるだろう。

世の人が苦手な香味野菜も大好きなら、紅茶や中国茶の微妙な香りをききわけるのもまた楽しい。とにかく馨モノに敏感な体質であると思う。

なのだけれど、何故かアルコール系香料、所謂香水はからだにあわないらしく、近くによるだけで変調を来す。

そんなわたしだけれど、香水瓶は好きである。ラリックの香水瓶に受けた衝撃をはじめ、ひとつひとつが個性的で宝飾品のように美しい。金子功氏がその著書でレースを布地の宝石と言ったのを見たことがあるが、香水を液体の宝石と言ったのは誰だったか。フランス人だった気がするけれど忘れてしまった。

うちにある香水瓶にはなかみは勿論入っていない。

空っぽの香水瓶を眺めては、架空の夜光花の馨などに酔ってみるのも、馨への溺れ方としては最上の部類だと思う。

香水瓶は自分で買ったことはない気がする。たいがいが女の子からのいただきもので、はずれなく可愛いものをいただく。画像の香水瓶も例に洩れずいただきもので、フランス製ときいた記憶。香水ってなぜかお仏蘭西なイメージがある。ふと気がついたけれど、この香水瓶、旧朝香邸(目黒の庭園美術館)の香水塔にシルエットが似ている気がする。香水塔というのは、要は巨大なアロマランプなのだが、あれは概念といい存在といい名前といい、わたしの永遠の憧れの装置だったりする。

香水瓶/硝子とピューター(現代)