「浴室幻想」

19_bath

昔から繰り返し視る夢がある。廃墟と化した浴室の、冷たい浴槽に浸かっている夢。ワイン色の朽ちたタイルであったり、コンクリートの壁であったり、浴室の風景は変わるが、わたしは変わらず口がきけないらしい。実験動物なのか、愛玩物なのか観賞魚なのかわからないが、ただぼんやりとその水槽に「飼われている」。幸福でも不幸でもない、ただそれだけの夢。醒めてみると奇妙に懐かしいような気がする夢。

そんな冷たくほの暗いノスタルジーとは別に、通常の入浴、温かい湯に浸かるのは大好きで、これはもうひとつの趣味といってもいいのかもしれない。低血圧で代謝が悪いので健康維持のためもあるのだが、健康維持などという名目とは別にしても、プライベートな密室である浴室に、好きなアロマやお茶や蝋燭を持ち込んで、ぼんやりと水溶の気分に浸るのはこの上なく快い時間。

そのため必ずバストイレ別、を絶対条件に部屋を探すことにしているのだけど、もしも自分の家を好きに建てられることがあるならば、窓があって光の入る浴室を階上に持ちたい。マンションの味気ないポリプロピレンの空間ではなく、もうひとつの自室のように寛げる場所、わずかな緑が置けるような、温室のような浴室。

とはいえ日本ではそんな浴室を持つことはなかなか難しい。広い庭に高い木々でもなければ、窓つきの浴室の窓も開けるに開けられない。

目下のところ温かい浴室も冷たい水槽も、わたしにとってはどちらも心に描くばかりの幻想のノスタルジーなのである。

というわけで当然こんな素敵な浴室はマンション暮らしのわたしの棲息場所にはありません(笑)。これは某洋館に行ったときに撮ってきた写真。洋館に行くと浴室に入って触ってみたいと思うのだけれど、どこの洋館も浴室は外から覗き込むしかないようになっているので、ますます浴室は幻想の海と化すのでありました。

某洋館の浴室(おそらく明治の建築)

そんな冷たくほの暗いノスタルジーとは別に、通常の入浴、温かい湯に浸かるのは大好きで、これはもうひとつの趣味といってもいいのかもしれない。低血圧で代謝が悪いので健康維持のためもあるのだが、健康維持などという名目とは別にしても、プライベートな密室である浴室に、好きなアロマやお茶や蝋燭を持ち込んで、ぼんやりと水溶の気分に浸るのはこの上なく快い時間。
そのため必ずバストイレ別、を絶対条件に部屋を探すことにしているのだけど、もしも自分の家を好きに建てられることがあるならば、窓があって光の入る浴室を階上に持ちたい。マンションの味気ないポリプロピレンの空間ではなく、もうひとつの自室のように寛げる場所、わずかな緑が置けるような、温室のような浴室。
とはいえ日本ではそんな浴室を持つことはなかなか難しい。広い庭に高い木々でもなければ、窓つきの浴室の窓も開けるに開けられない。
目下のところ温かい浴室も冷たい水槽も、わたしにとってはどちらも心に描くばかりの幻想のノスタルジーなのである。
というわけで当然こんな素敵な浴室はマンション暮らしのわたしの棲息場所にはありません(笑)。これは某洋館に行ったときに撮ってきた写真。洋館に行くと浴室に入って触ってみたいと思うのだけれど、どこの洋館も浴室は外から覗き込むしかないようになっているので、ますます浴室は幻想の海と化すのでありました。
某洋館の浴室
(おそらく明治の建築)