歪んだ時間

百日紅がまだ咲き残っているのに、夜には金木犀の香りがする。
今年の百日紅は盛夏を計り損ねて、花も小さく色もくすんでいる。
散りたいのに散れないような咲き方で、枝先に小さくしがみついている。
金木犀の姿は見えない。
おそらく枝にはもうわずかにでも花がついているのだろうけれど、
夜目ではまだ見つけることができない。
ただ香りだけが濃い。
真夏の花を残したまま、秋の香りが零れる。
歪んだ時間の中を わたしは歩く。