◇その後のみとせ、と、いろいろ

地震から一週間、都内は計画停電や電車の不確定要素、うっかりさんたちによるパン・牛乳の不足などはありますが、人も環境も一時に較べてずいぶん落ち着いてきたように思います。被災地の方々は未だ厳しくつらい中にいらっしゃる方も多いこととお見舞いを申し上げます。また最前線ではこの状況と闘っていらっしゃる方々もいる。応援しか出来ませんが、信じて感謝して祈っています。

その後のみとせはといえば、13日からびっしりほぼ休みなく25日あたりまで詰まっていた収録がまるっと飛んでしまい、気合という支えがすぽーんとなくなってしまって、抜け殻になりかけておりました。そんなところに余震が続いて珍しく不安になったり不眠気味になったり(右脚を傷めているせいと低血圧のせいでもともと始終ゆら~んとしてるんですが・笑)、意外とか弱いじゃないのわたくし、という2-3日でしたが、唄うと腹式呼吸と集中力のおかげで不安で絞まった胸が緩むので、マイクを立てて自分の今の心にやさしい唄をアカペラで録っていました。唄っていたのは主に唱歌でしたが、しまいにはそれを今まで自分が唄ってきた曲の中からやわらかいものと組み合わせて並べ、子守唄のように聴きながら寝ていました。なんたる自給自足(笑)。

ツイッターの方でも書きましたが、唄うと心身が元気になるのにはちゃんと理由があって、腹式呼吸で丹田に深く息を入れて吐くと深呼吸した状態になりますし、お腹の辺りの動脈と副交感神経が刺激されて血液の循環がよくなります。声を響かせるために頬の筋肉を上げるので、笑ったのと同じ状態になり、脳みそが明るい刺激を受けるのです。だから余震や停電で怖い、と思って胸がきゅっと締まって呼吸が苦しくなったら、お腹の深いところまで息を吸い込んで、明るくて簡単な唄を唄ってみてください。「アルプス一万尺」とか、唱歌・童謡がお勧めです。歌詞が判らなかったらら~んららん♪でいいので(笑)。耳から明るい音が入ってくるだけで感情が上向きますよん。

そんな音楽療法(?)のおかげで不安という点ではすっかり落ち着いたみとせなのですが、やはり収録が飛んじゃったのは痛いです。これをお読みになっている皆様にはもう想像がついていると思うのですが、この時期にびっしり詰まっていたプロジェクトと言えば当然「カタン<第二集>」以外になく、飛んだのはまさにその収録でした。
発売日に間に合うように忙しい奏者さんやアレンジャーさん、エンジニアさんのスケジュールを合わせて組んだ収録計画がまるっと飛んでしまったということは、こればかりは仕方がないのですが、発売の延期に直結してしまうということです。
まだ詳細は決まっていないのですが、「カタン<第二集>」の発売は少しばかり先送りになってしまうと思います。楽しみにして下さっていた皆様にはほんとにすみません。

とはいえみとせもアレンジャーさんたちも、エンジニアのDaniさんも、ティームさんでみとせのアルバムを担当して下さっている中村さんも、へこたれて成り行きに任せているだけではありません。アレンジャーさんたちはこぞって「収録が延びたならアレンジもっと手を入れますね!」「時間あるなら生楽器追加していいですか?」と、状況を逆手にとってのものすごいポジティブさ。Daniさんは停電になっても収録できる簡易システムをあっという間にくみ上げてしまうし、中村さんは既に各方面との連絡や調整に追われているし、なんかもう音楽人て基本タフです(笑)。
なので必ずや、日にちが延びた分だけの濃さと佳さとを詰め込んで、「カタン<第二集>」お届けすることを約束します。

詳細が決まりましたらまたあらためて、ティームさんとみとせの両方からお知らせさせて頂くことになると思いますが、ご報告までもう少し待っていてくださいませ。

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いろんな方が本震直後から応援の曲や動画、イラストなどをあげて激励と慰安を示していらっしゃいましたが、1週間経って少し落ち着いてきた地域もあって、漸くそれらが一部の方の心には届くようになってきたのではないかと思います。本震から暫くはそれを受け取れる心の余裕すらなかったと、自分を振り返って思うので。勿論まだその映像も、音さえ届かない地域もあるのですが、祈りは届くようにとわたしも願っています。
いろんな方が積極的に応援のメッセージを発信する中で、目前の収録も延期になってしまったわたしにできることは何だろう、と思いましたが、不器用なわたしにできることは無闇に動くことではなくて、音楽人であることの前にこの国に住まう一人の人間として、微力ながら節電をし、持てるわずかな余裕を出来る限り募金し、無駄な物資と移動の消費を控えることだと思いました。
もう少ししたらきっと、もっと音楽の力が傷ついたこの国と人を癒せるときがくると思います。その頃にもしも出来ることがあれば、たとえその手段が音楽であったとしても、音楽人としてではなくやはりこの国に住むただの一人の人間として、自分のために、そしてそれが同時に誰かのためにもなるようにと祈りながら、動きたいと思います。

被災者、ということばではなく、この震災で傷ついたすべての方に—-それはおそらく自分自身も含めて—-少しでも早く日常が戻りますように。

まだ寒いですが、もうすぐ東京では桜が咲く時期です。
今年の桜はきっととても美しいと思います。